Developing a clinical prediction rule to identify patients with lumbar disc herniation who demonstrate short-term improvement with mechanical lumbar traction. Phys Ther Res. 2019;22(1):9-16

 

この研究は、2週間の腰椎牽引(機械)を受けた腰椎椎間板ヘルニア(LDH)患者103人から、治療後の反応を予測する臨床予測式(CPR)を抽出しています。 腰椎牽引によって効果が確認された患者は、全体の内24人(23.3%)でした。 CPRは5つの予測因子で構成され、腰椎伸展可動域制限、恐怖回避思考(仕事)が低い状態、各腰椎分節における部分的可動域制限が無い状態、発症から短期間であること、および突然の発症が選択されています。 5つの予測因子のうち3つを満たした場合、2週間の腰椎牽引後にOswestry Disability Indexでより良い結果を示す傾向が認められています。 CPRの陽性尤度比は3.13(2.05-4.78)で、感度は0.79、特異度は0.75でした。著者らは、研究デザイン上の限界を挙げたうえで、この結果を臨床に即適用することはできないと述べています。同時に、腰椎牽引によって効果が出ないLDH患者を選別するための有用な指標を抽出するベースになりうると結論付けています。

 

著者らが述べているように、この研究で提案されているCPRはRCT研究によって妥当性の検証をされる必要があります。しかしながら、興味深いことに103人の腰椎ヘルニア患者のうち、24人の患者が腰椎牽引によって機能改善を示しています。また5つの予測因子のうち0または1つしか陽性とならなかった26人の患者のうち、25人の患者は腰椎牽引による効果がありませんでした。 Wegnerらは、Cochraneレビュー論文で腰椎牽引の効果を疑問視していますので、臨床家は性急に「腰椎牽引」はヘルニア患者には役に立たないと結論付けてしまうかもしれません。しかしながら、実際には腰椎牽引によって良くなるヘルニア患者、および良くならない患者が存在することを、この研究は具体的に示しています。患者にとってもっとも論理的に妥当で、かつ患者中心の方法を臨床家が選択することができるよう、あらゆる方法を考えていきたいですね。


Jiandani MP, Mhatre BS. Physical therapy diagnosis: How is it different?. J Postgrad Med. 2018 Apr-Jun;64(2):69-72

 

この論文では、理学療法診断学Physical Therapy Diagnosisについて、その必要性Need、目的Purpose、医学的診断との棲み分けDifferentiating from medical diagnosisなどが説明されています。また、ICFの枠組みを使った理学療法診断の概要やそのベネフィットについても解説されています。後半は、理学療法士による診断の測定パラメタは、心身機能を測定するアウトカムベースになることが述べられています。

この論文の著者らに従えば、医師が行う診断は疾患に着目する一方、理学療法士が行う診断は生活機能に目を向けることになります。そして、生活機能の中でも特に心身機能(とりわけmovement dysfunction)に注目し、その原因、および活動や参加に及ぼす影響を分析することになります。ただし、心身機能は、個人因子や環境因子といった背景因子からも影響を受けることがあるため、理学療法診断においても、心身機能の測定ばかりに固執するのではなく、全体論的holisticかつ包括的comprehensiveな視野が必要になると思われます。